経済的な左右のイデオロギーはどう政治に絡むのか?

前回のエントリー(参照)で中国における改革派と保守派(新自由主義vs新左派)の論争がどうも激しくなってるっぽいという話をしたのが今回はそれをどういう政治的な文脈で理解したらよいのか考えてみたい。 前回コメントでkaikaji先生からの御指摘。 私もこ…

水面下で進む保革激突の構図

以前に『財経』にのった皇甫平*1の「改革を動揺させるな」(参考)の時にも伺えたが、中国の内政を巡って新たな右派と左派の対立が生じている。いわゆる右派とは「新自由主義」とも呼ばれる、市場原理を通じた経済運営を重視し、さらに中国の市場化を推し進…

ヲチの流儀(改訂版「ネタとかネタ元とか」)

情報収集の目的は、現在の状況、変化の発生を捉える「観測」を行い、その得られた情報の確度(確かさ)を推測ないしは判断し、確度の高い情報の中から何が起こっているのか、どのように変化しているかを分析し、他の情報の分析と比較、融合し、その結果として…

「力」について

力とは、人の、他の人の心と行動に対する支配の力である。そして、そのもっとも具体的で、判りやすい形として、物理的強制力、すなわち暴力が存在するだけであり、それにいたる過程には、さまざまな段階が存在するのである。 したがって、これから先、軍事力…

「よいこ」像の変遷に「中の人」を思う。

武田雅哉、『よいこの文化大革命』、廣済堂出版、2003年 現在、「中国宏観経済与改革走勢座談会紀要」なんぞという糞長い文章をノートつけながら読んでいるわけですが、そこに丁度この本が配送されて来たので気分を変えようかと読んでみたところ面白くて一気…

ユートピアンとリアリスト

もし目的が思考に先行して、思考の道筋をきめることになるなら、人間の心が新しい分野で働きはじめる場合に願望とか目標がつよく前面に出て、そこでの事実や手続きを分析しようとするゆき方を押さえ込み、この方向に伸びる芽さえ摘みとる形で事がはこばれる…

「侠」或いは秘密結社についての断片的メモ

朋友N′s氏曰く「まとめられない文章はメモってことにすりゃいいじゃまいか」という素晴らしいことを言っておられるので早速マネすることにする。(参照)1-1 侠: 子分をかかえて仲間どうしで協力する人たち。男だて。結社をつくり法に従わないが、義理がた…

果たしてツンデレなのか?そしてツンデレは最強なのか?

衛慧、『ブッダと結婚』、講談社、2005年 前作、『上海ベイビー』も確か文庫版を読んだはずだったんだが、ああ中国はバブルなんだなあ、という感想以外は綺麗に忘れてしまった。今回も、やっぱり中国(特に上海)はバブルなんだなあというのが先ず感想。しか…

紅い資本主義の行方はどっちだ?

興梠一郎、『中国激流―13億のゆくえ』、岩波書店、2005年 2005年7月20日に第1刷が発行されて、2006年1月16日には既に第6刷発行となっている。新聞や雑誌などのマスメディアに載る多くの中国情報が物足りない昨今(無論、良質の情報もあるけど)、この本の様…

『〈鬼子〉たちの肖像 中国人が描いた日本人』

武田雅哉、『〈鬼子〉たちの肖像―中国人が描いた日本人』、中央公論新社、2005年 ネタのレパートリーを増やそうかと思い書評の真似事などしてみようかと思う。というか、書評というほどのものでなく読書記録というか、感想文程度のものだと思っていただきた…

中国における支配の問題に関する若干の考察

権力というのは政治的強制力、もっと言えば物理的な暴力である。英語というのは中々に見も蓋も無い言語で、権力は“power”と訳される。真に権力というものの本質的な意味を表わしている。したがって国家の権力とは具体的な暴力装置である警察力であるとか軍事…

皇甫平「改革を動揺させてはならない」を読む

前回触れた皇甫平の評論だが、政局がらみじゃなくても中々面白いことが書いてあったので、皆さんと「享受」すべくざっくり翻訳して見た。現在、中国国内で論争の焦点となっているのはどういう問題なのか、というのが大まかに見えてくると思う。なお、文中の…

李大同の公開書信を読む

中国青年報が発行していた『氷点』誌が当局からの圧力により停刊となった事件はご存知のことかと思う。日本語の新聞記事リンクはすぐに切れるので一部引用すると、 中国有力紙「中国青年報」の付属週刊紙「冰点週刊」が、24日に停刊処分を受けたことが、同…

農民の「反乱」現象についてあれこれ(2)

前回は枕で終わってしまったが、今回は本編。前回の話は忘れてこっから読んでもらった方が良いかも知れない。前回は脱線し過ぎた。 さて、農村での集団抗争事件についてである。農民の集団抗争事件というもの自体は実は人民公社時代からあることはあった。も…

農民の「反乱」現象についてあれこれ

最近になって報道が増えてきてる中国の集団抗争事件、特に農村のそれは多くの人の耳目をひきつけていると思われる。ネット上に溢れる言論などを眺めるに、或いはかつての王朝の様に、或いはかつて中国共産党が天下をとったように、農民の「反乱」が中国分裂…

ぼちぼちと

ぼちぼち更新を再開していこうかと思う。本業の方は1月の頭に無事終了したわけだが、その後暴飲暴食を繰り返してしまい今に至った。むしゃくしゃしてやった。今は反省している。 個人的な理由と、ちょっと思うところあってこちらは中国観察を中心に更新して…

中国ヲチの方法論

何となく中国ヲチの方法論などメモ。 派閥主義アプローチ ここではある指導者とその政治的な支持者間の私的な人間関係を中心としたネットワークを派閥と定義する。こうした派閥は弾力性を有しており、何かしらの巨大で正式な組織に属しているわけではない。…

胡錦濤は中央政治局の主導権を掌握か

目下の中国政治の焦点である十六期五中全会は10月8日から11日までの開催と決定した。また、10月上旬にはロケット神船六号の打ち上げが予定されており、それに合わせて、五中全会で決定される大十一次五カ年計画の開始を「中国の科学技術の全面勝利」とかいっ…

中国農村の歴史的な因果は巡る

国家権力が郷村社会をその勢力範囲に包摂しようとする過程において、国家の財政が直接に郷村社会をコントロールするための官僚隊伍を支えきれないことから、国家は郷村社会に低コストの代理人を求める必要がある。しかしながら、国家の代理人の権力は異化し…

和諧社会は胡錦濤印の金太郎飴か?

香港の『大公報』は五中全会が10月上旬の最後の幾日かに開催されると報道している(註1)。この報道は9月25日付けの『香港文匯報』の報道とも符合する(註2)。更に日本の時事通信は具体的に10月10日前後に数日に渡って開催されるとしている(註3)。 『大公…

動き出す五中全会

香港文匯報の報道によると、第十六期五中全会(第十六期中央委員会第五回全体会議)の日程が近々開かれる中共中央政治局会議で決定されるとのこと(註1)。五中全会は中国の「国慶節」、つまり10月1日から始まる休日の後に開かれる可能性が濃厚である。また…

展開を見せる広東省番禺区魚窩頭鎮大石村の抗争事件

以前に何度か書いた大石村の件(参照1、参照2)が新たな展開を見せているので、事件のその後について書いてみようかと思う。 前回は9月1日の早朝に番禺区政府前に座り込み、ハンガーストライキに突入した大石村の村民が武装警察に排除されたところまで書いた…

踊る中共の権力核心-死せる胡耀邦、活ける胡錦濤を走らす(3)

前々回、前回の続きです。 更新が遅れてしまった。すでに話題としては遅きに失した感があるが胡耀邦の再評価の動きについて思うところを述べたいと思う。 こうした動きを先ず報じたのはロイター通信でそこでは、「国民に人気のあった胡耀邦氏の追悼集会は、…

踊る中共の権力核心―将を射んとすれば先ず馬を射よ(2)

前回の続きです。対台湾政策と抗日戦争観の変化 さて、胡耀邦絡みの話を始める前にもう一つの路線闘争、台湾政策についても触れておきたい。本来、江沢民時代と胡錦濤時代の台湾政策に大きな変化は無かった。両者は台湾では「江八点」と呼ばれる江沢民が提起…

踊る中共の権力核心−権力闘争はいよいよその核心へ?(1)

中共の権力核心周辺の権力闘争は、隠微なサボタージュ、人事を巡る陣取り合戦といった段階から、いよいよ路線闘争と自らの主張するイデオロギー同士の衝突へと突入しつつあるようだ。中国的な政治文化にあっては、路線闘争とイデオロギー論争は常に権力闘争…

抗日戦争勝利60周年記念大会にまつわる政治力学

9月3日に行われた中国の抗日戦争勝利60周年記念大会に関する評論などをつらつら読んで見ると、中国共産党の唱えるお経部分を除くと注目すべき点は以下の三点に絞られるかと思う。(1)胡錦濤との対立が囁かれる江沢民の動向、(2)胡錦濤は国民党が抗日戦争…

広東省番禺魚窩頭鎮大石村の事件に関する追記

事実誤認があったのでその訂正から。大石村の村民が座り込みを決行したのは魚窩頭鎮政府ではなく番禺区民政局である模様です。この点に関して前回の文章を訂正しました。更に後半部分事実関係が曖昧なのと9月1日早朝に座り込みをしていた村民が本格的に当局…

中国農民の目覚め?

写真は『RFA』より転載。勝手に転載もあれだが、多くの人にこの事件を知ってもらうほうがいいだろうという趣旨で敢えて。魚窩頭鎮政府の前で座り込む大石村の村民。 前回触れた広東省番禺魚窩頭鎮大石村で起きた村民委員会主任(村長)を巡る村民と各種基層…

中国の集団抗争事件はますます深刻に

『美国之声』(Voce of America中文版)の8月29日付「中国一年发生七万多次民众抗争」という記事によれば(註1)、台湾の行政院大陸委員会(註2)は昨今の中国における集団抗争事件に関する報告を8月29日に発表した。発表されたのは『近期中國大陸群體性抗…

五中全会前夜

中国的な慣習では旧暦の7月は中元普渡もあり「鬼節」といって幽霊の季節だ。うろ覚えだが確かあの世とこの世の間にある扉がこの季節は開くんだったか?この間などそこらじゅうで紙銭だかお札だか燃やしていて、歩道で燃やすものだから通行するのに熱かった。…