反日デモ雑感(3);領導・権力の軋み

 反日デモの暴徒化、過激化を受けて中国政府はその沈静化に躍起の模様。

3500人党集会 中国、デモ不参加訴え

 【北京=野口東秀】中国で報道などを統括する共産党中央宣伝部は十九日、北京で政府、軍、マスコミ、大学生など関係団体代表三千五百人を集め「中日関係報告会」を開催、李肇星外相が報告者となり、日中関係の重要性を強調したうえで「未許可デモに参加しないよう」求めた。五月四日の「五四運動」記念日などに向け各地でデモの連携の動きもみられることから本格的にメディアを通じ反日運動の沈静化に力を入れ始めたものだ。

「反日」改善キャンペーン開始=宣伝団、デモ地で学生教育−中国

 宣伝団が各地に赴くというのも古き良きプロパガンダの匂いがするが、党中央は兎にも角にもこれ以上の騒乱状態が現出するのを阻止したい模様。

 また、こうした党中央とは異なる動きが軍部で見られるという、某所で面白い記事が紹介されていたので、私なりに解釈をば。

共軍異動,國人被騙,反日煞車 
(『南方快報;林保華専欄』 2005年4月20日

(前文略)但是,更令中共高層緊張與不安的,是軍隊內部出現異動。根據香港明報報導,在那幾天,軍方高層原擬組織一場中日關係青年研討會,邀請解放軍內的高級政治工作者和軍內外青年學者,研討近幾年中日關係的困境、走出困境的新思維、中日關係的前景等,以謀求對策和發展。研討會得到軍方高層主管部門批准。胡錦濤 4 月10日從山東視察回到北京後,獲知此事非常生氣,立刻嚴詞喝止。

 所謂「對策」與「新思維」,看來是對日本非常強硬的內容,至少胡錦濤是這樣認為的,否則不會下令禁止。因為報導還說,胡錦濤嚴徐s批評軍方的這項安排與大局不符,會煽動民情,使民眾的反日情緒徐ョ加熱度。據稱,多名軍方高層事後趕緊作了深刻的自我批評。

 しかし、更に中共の高層を緊張させ不安にしたのは、軍隊内部に現れた異なる動きである。香港の明報の報道によると、その何日か、軍部の高層は中日関係青年検討会を組織して、解放軍内の高級政治工作者、軍内外の青年学者などを招待して、この数年の中日関係の苦境を検討し、苦境を脱する為の新思考、中日関係の背景など、対策と発展を図ることを求めるものであった。検討会は軍部の高層主管部門の許可を得た。胡錦濤は4月10日に山東の視察から北京に戻った後にこれを知り激怒、直ちに厳しい言葉で中止させた。

 いわゆる「対策」と「新思考」は、見たところ日本に対して非常に強硬な内容のようである、少なくとも胡錦濤はその様に認識した、さもなくば中止を命令することは無かっただろう。報道がさらに伝えるところによると、胡錦濤は軍部が大局に合致しない、民衆の感情を扇動し、民衆の反日感情を加熱する、この様な計画を厳しく批判した。報道によれば、多くの軍部の高層が事後に直ちに深い自己批判をしたとのことだ。

 事後在網上出現一篇叫做劉亞洲等十位軍中少壯派將領的文章,題目是:「欲人尊我,必先自尊,日本人為何對我猖狂?」這十個人中,一個是中將劉亞洲、兩個少將、一個教授,其他都是大校,有名有姓。文章提出五點要求,包括立即無條件否決並廢除此前中國政府所通過的任何放棄對日索賠的條約或承諾,必要時可考慮啟動全民公投機制;支持政府強硬向日方交涉,不得染指東海油氣田,必要時共軍可派出艦隊保衛祖國海疆等等。

 由於近來劉亞洲相當活躍,評論軍國大事,他又是前國家主席李先念的女婿,如果這消息真實,表明軍人干政的情形越來越嚴重,不但干政,而且有遠大目標。而「太子軍」與黨內的「太子黨」有沒有聯繫?也難怪胡錦濤要震怒了,因為他的權力顯然受到了威脅。黨內、軍內有人利用反日浪潮開展權力鬥爭。這種鬥爭的表面化,又為觀察中共政局與近日反日運動提供一個切入點。

 事件後、ネット上には劉亜州など十名の軍内の少壮派の将領の文章とされる文章が出現した。題名は「人の尊重を受けようとすれば、まず自分を尊重すべきだ、日本人は何ゆえ我々に対して凶暴なのか?」この十名の中、一人は中将である劉亜州、二人は少将、一人は教授、その他は大佐で、何れも姓名記されている。文章は五つの要求を提示している、直ちにこれまでに中国政府が対日賠償を放棄するとした如何なる条約・承諾も無条件でこれを否決し廃止する、必要な場合公民投票によって政府が対日強硬交渉を行うことを支持する、東シナ海のガス田に干渉させない、必要な時は人民解放軍が艦隊を派遣して祖国の海上国境を守る、等。


 劉亜州という人物は近頃非常に活躍している人物で、軍事や国家の大事を評論し、また前国家主席李先念の女婿であることから、もしこの情報が真実ならば、それは軍人が政治に干渉するという状況がだんだんと深刻になっていることの現れで、政治干渉だけではなく、更に大きな目標があることの現れである。さらに「太子軍」と「太子党」には繋がりがあるのだろうか?道理で胡錦濤が激怒したはずで、彼の権力は明らかに脅威を受けている。党内、軍内のあるグループは反日のうねりの中で、権力闘争を展開している。この種の権力闘争の表面化は、中共政局と昨今の反日運動を観察する上での注目すべきポイントを提示している。(以下略)

 林保華氏の指摘するように、党中央、更に言えば胡錦濤派と軍部内のあるグループが対立しつつあるのであれば事は剣呑である。「反国家分裂法」の制定過程を見ても、この種の対外強硬派が一定の発言力を持ちつつあるのは事実のように思われる。文中紹介の、「ネット上に現れた五つの要求」なるものの信憑性は甚だ怪しいものだが(ネット上にとぐろを巻いてる自称愛国者などが書きそうな文である)。人民解放軍の描いている「台湾解放」のシナリオと国防計画などを鑑みるに、日米の台湾に対する近頃の政策は、中国の軍部にとって首肯できるものではない。反日暴動を利用して日本に対する揺さぶりをかける、という点においては今次の反日暴動は軍部にとっても利益を見出せるように思われるが・・・・。

 今週末から5月4日にかけて反日デモがどの様な規模で、どの様な形式で行われるのか、それとも党中央の努力の甲斐もあり終息に向かうのか、という点は、胡錦濤が党内においてどれだけの権力を掌握しているのかという指標にもなりそうだ。

 大国間のパワーバランスの軋みが極東情勢に風雲急を告げている。