呉儀副首相の会談ドタキャン(2)

 反日デモとその鎮圧、また今回の呉儀副首相の訪日と小泉首相との会談をキャンセルしての急遽帰国したことに関して不穏な情報が流れている。この記事、某外電さんスレで目に留まったのだが、これが事実とすると中国の権力闘争は大分深刻な事態に立ち至ってる可能性がある。

大紀元』聞軍「少壮軍人が胡錦濤主席に最後通牒 呉儀召還の隠された真実?

 中国内情ウェッブサイト・看中国(シークレットチャイナ)の報道によると、5月23日の朝早く、軍人たちの要求通知が手元に届いた胡錦濤主席が急遽、東京に到達した呉儀副首相に対して、5月23日午後に小泉純一郎首相との会談予定を取り消すように通知した。そのため、日本側は、呉儀副首相は緊急公務のため帰京することで、中国政府の要求通り会談を取り消したと発表した。

 中南海高層部の内情を知る少壮軍人によると、いわゆる“緊急公務”とは、対日政策の変更および軍人を落ち着かせるための、軍事クーデターを予防する対策だという。

 この文中の要求通知をまとめた軍人グループのリーダー格と目されているのが劉亜州と言う人物。反日暴動の前後で軍内で対日強硬政策を求めるシンポジウムを開き、胡錦濤に中止されせられたと伝えられている人物である(参照)。

 次の記事は江沢民が5月1日に南京大虐殺紀念館を参拝したとする情報が流れたことに関して、上海閥胡錦濤勢力との権力闘争の文脈から分析したエッセイ。この時期に江沢民南京大虐殺紀念館参拝なる報が流れるのは、当然に昨今の胡錦濤反日デモ鎮圧、呉儀の日本派遣に対する意思表明である。この文章、本来、全文訳していたのだが手違いでファイルを消してしまい(泣き)、一部抜粋という形にした。『新世紀』という媒体は中国人反対制派のものらしく、この文章はそうした人々が現状の中共内部をどう見ているかについても一つの視点を提供していると思う。そしてここでも例の劉亜州先生のご登場である。

『新世紀』http://www.ncn.org/asp/zwginfo/da-KAY.asp?ID=64001%20&ad=5/27/2005【学渊点评】江泽民上海帮与胡锦涛展开新一轮较量 曾节明:江泽民有卷土重来之势

曹節明「江沢民に捲土重来の勢有り」

(前文略)

这一次不仅是老百姓受够了,就是中共党内、军内的非胡派系也受够了。最近网上风传的曹刚川等军头与胡锦涛关系紧张、少壮派军官对胡锦涛的严斥和最后通牒,绝不是空穴来风。

 今度ばかりは一般民衆ばかりか、中共党内、軍部内の非胡派も我慢できないでいる。最近ネット上で曹剛川などの軍部の重鎮と胡錦濤との関係が緊張しているとの風説があり、少壮派の将校が胡錦濤に対して厳しく叱責し最後通牒を突きつけたと言う、火の無いところに煙は立たない。

(中略)

江泽民就在这个时候出击胡锦涛,时机选择得非常好。本来,无恕y无能的僵贼泯臭名昭著,根本没有权威象邓小平扳倒胡耀邦那样扳倒胡锦涛。但是两年多来胡锦涛所行的比江泽民所行的更反动的恶政,甚至使得部分知识分子和民众开始怀念江泽民,胡锦涛自己搞垮了自己。

 江沢民がこの時期に胡錦濤の攻撃に出たのは、時機の選択として非常によい。本来、無徳無能の頭の固い賊、どうでもいい名すら失ってるということを鑑みれば、全くもって勝g小平が胡耀邦を引き倒した様に胡錦濤を引き倒す様な権威を持っていないのだが、この二年来の胡錦濤が行った江沢民に比しても更に反動的な悪政は、甚だしきに至っては一部の知識分子と民衆に江沢民を懐かしく思わせ始めている。胡錦濤は自分自身の首を絞めているのだ。

当前,军队对胡锦涛威胁最大,胡某人也无力防范军队。但是军队倒胡的成果很可能为江泽民势力据有,因为军内倒胡派在党政高层目前没有代理,因此,江泽民重新上台或者其代理曾庆红上台是当前形势所趋。

 目下、軍部は胡錦濤にとって最大の脅威だ、胡某人もまた軍部を防止するのに無力なのだ。しかし、軍部の倒胡の成果は江沢民勢力に美味しいところを持って行かれる可能性が高い、なぜなら軍部の倒胡派は党の高層に今のところその代理人を持たないからだ、それ故に江沢民が再び表舞台に登場するか、その代理人である曽慶紅が舞台に上がるというのが現在の情勢の趨勢である。

(中略)

由于江、曾都缺乏压倒军队的权威,曾庆红乃太子党出身,又是无原则的实用主义者,不受教条束缚,又急于谋取军中地位,因此与同为太子党的刘亚洲等人合作的可能性较大。江泽民深受西方的熏陶,虽然专制独裁,但并不接受金正日的那一套,况且贼民年事已高,比起胡某人,野心及危害都已很有限。江泽民乃骨子里的亲美腐败分子,绝不会为了台湾而冒与美国开战的风险。为了防止又被人取代,江曾二人势必要吸取教训胡的教训。因此,江泽民的卷土重来,虽然仍是专制独裁统治,但中国的专制体制将重新迅速松动。中国将随着江泽民的死亡,真正迎来民主化转机。

 江、曽ともに軍部内での権威に関しては圧倒的にかけている、曽慶紅は太子党出身でもあるが、また無原則の実用主義者で、教条主義の束縛を受けず、また軍部内での地位を急ぎ欲している、それ故に同じく太子党の劉亜州などの人物たちと協力する可能性が大きい。江沢民は西側の薫陶を深く受けており、専制独裁とは言っても金正日のあの様な形は受け入れない、賊民(沢民)が高齢であるというのも、胡某人と比べれば、野心と危害について限られてくることになる。江沢民はまた骨格の中の親米腐敗分子ともに、台湾のために米国と開戦するなどという危険を冒すことは絶対に無いだろう。余人をして取って代わられることを防ぐためにも、江曽両人は胡の教訓を汲み取る必要がある。それ故に、江沢民の捲土重来は、専制独裁統治と言えども、中国の専制体制は新たに融通のきくものになるだろう。そして中国は江沢民の死亡に伴って、真の民主化の転機を迎えるようになる。

然而,当前危险的因素仍然存在:面对内外交困和军队的通牒,胡温困兽犹斗,为了树立权威、挽救反动统治,完全有可能孤注一掷,乘统战连宋的烟幕发动对台战争,拉上亿万民众为自己陪葬。这是难测极端危险的因素,广大民运人士、爱国人士应该警恕・amp;#25112;争、阻止战争。

 しかしながら、目下いまだに危険な要素が存在する。すなわち、内政外交の困難と軍部の通牒に、胡温は追い詰められた獣がなお戦うように、権威を樹立し、反動統治を挽回し、乾坤一擲の勝負にでて、連宋への統一戦線を煙幕にして台湾に対する戦争を発動し、億万民衆を自分の陪葬者として引きずり込む可能性がある。これは推測し難い極端な危険要素だが、大多数の民主運動化人士、愛国人士は戦争を警戒して、戦争を阻止すべきである。

(『大参考』より転載)

 これらの情報が正しいとすれば(中国情報はこれが曲者なのだが)、従来からの胡錦濤グループと江沢民または曽慶紅を中心とする上海閥との権力闘争に、軍部内の反胡錦濤派が合流しているような構図が見える。そして軍内グループの影に見え隠れしているのが劉亜州なる人物だ。ネット上で流布されている彼の主張と言うのは可也アレなものなのだが、軍部内での影響力というのはどの程度なのだろうか。226事件の様に、表立って動いている青年将校などよりその背後にいる実力者の存在が気にかかるところだ。曹節明氏はネット経由の情報として、曹剛川と胡錦濤の関係が緊張しつつあるとして、その存在を匂わせている様に思われるが。

 前述した様に(参照)、呉儀のドタキャンの説明が当初の「緊急の公務」から「靖国参拝反対」と一転した背景を勘案すると、党内部での力関係の変化が一つの可能性として推測されるのは確かだ。胡錦濤が党内の対日強硬派の突き上げを食らって、「対日融和政策」的な動きを封じられたと考えると上記の記事とは整合的に思われる。しかし、クーデターという話は幾らなんでも眉唾に思えるが。天安門事件当時、勝g小平の様に軍部内に卓抜な影響力を持つ人物でさえ、北京に部隊を進駐させるとなると、石家荘や四川の部隊を動かさざる得ないほどそのハードルは高いのだが。

 このネタを見ていて文革当時、中国情報を手に入れるに際しての苦労話を思い出した。文革当時、中国で何が起きているのかという情報は中々海外に出てこなかったのだが、香港経由で壁新聞、政治ゴシップ、中共の内部文章、噂、などなど様々な情報が玉石混交の状態で流失して来たらしい。その中には商売目的や政治的な意図をもって偽造された情報やら、本当に重要な情報などが混じりあい、中国観察者を悩ませたとのこと。ネット時代においてもその在り様あまり変わっていないのかも。

 しかし、詳細な点で情報の確度としては疑問が残るが、大筋の胡錦濤グループ、江沢民グループ、軍部内の反胡錦濤グループという権力闘争の図式は他の情報などとも勘案しても正しい様に思われる。専制独裁国家にあっては往々にして、内部の権力闘争>外交政策、と言った優先順位が見て取れるが、日本としてはいい迷惑である。