動き出す五中全会

 香港文匯報の報道によると、第十六期五中全会(第十六期中央委員会第五回全体会議)の日程が近々開かれる中共中央政治局会議で決定されるとのこと(註1)。五中全会は中国の「国慶節」、つまり10月1日から始まる休日の後に開かれる可能性が濃厚である。また、五中全会では第十一次五ヵ年計画についての討論が行われる見込みであり、それに関する計画草案の基本点は既に定まっているらしい。前日に伝えられた中国総理・温家宝の欧州訪問が延期されたのも(註2)、これに関係していると思われる。

 中共に批判的な中南海ウオッチャーである林保華は、やはり五中全会を前にして温家宝自身が参与しなければならない重大問題が生じている可能性があるとしている(註3)。彼が挙げる中共指導部が直面している「内憂」と「外患」を列挙してみよう。

● 中共一七大に向けた人事配置。特に江沢民系と見られている現上海市党委書記を胡錦濤系に替えることが出来るかというのは一つの焦点。
● 政軍関係。劉亜洲と朱成虎は公に異なった軍事上の観点を述べている。またこれは中共党史と軍事史にお いても見ることが出来る。
● 経済権益の衝突。去年の春に始まった中央主導のマクロ経済調整は上海を代表とする地方諸侯の抵抗に あって今に至るも徹底してはいない。温家宝の9月中旬の広東へ訪問は一つの「躓き」であった。広東第一書記・張徳江江沢民系であり、深圳ももともと江沢民系の黄麗満の影響力が強い。
● 中国の言ういわゆる「平和的な台頭」に対して質疑が続いている。中国製の輸出商品は輸入国の不満を引き起こしている。

 上述の香港文匯報の報道においても第十一次五カ年計画の草案起草に関わっている官員の話として、次の趣旨で計画されているとしている(註4)。

● 科学的発展観を強調し、和諧社会を建設する。
● 計画の理念は「以人為本」(人民を以って根本と為す)であり、全面的で、協調的な持続可能な発展を促す。
● 経済成長方式
● 産業構造
● 「三農」問題
● 都市化
● 地域発展
● 和諧社会

 この内容を見ると第十一次五カ年計画は胡錦濤の色彩濃厚な線で草案が起草されている。これは前述したような(参照1参照2参照3江沢民時代の「社会主義初級段階論」に基づく経済成長市場主義、「先富論」的な発展観と対を成すものである。ここに来て胡錦濤は中央突破全面展開という勝負に出たように思われるが如何だろうか?点はやがて線となり面を現しつつある。

 さらにこの時期に至って、香港やシンガポールと言った中国と関係の深いメディアがある地域を飛び越えた外電という形で中共内の権力闘争に関わる微妙な情報が流れてきた。このパターンというのは他にも結構見られて、中国国内や香港などのメディアに接点を持たない、或いは影響力の無い勢力のリークとしてその背景を考えてみるのも面白いかもしれない。む、ちょっと先走ったか。

 この記事、元々は『The New York Times』の9月24日付けのニュース(註5)。私は台湾の報道経由で知った(註6)。この報道では胡錦濤と曽慶紅が、去年の江沢民の中央軍事委員会主席からの辞職に関して協力体制をとっており、更に台湾の野党指導者の大陸訪問、香港に関する政治事務の重大な政策決定において胡錦濤と曽慶紅が共同で完成させていたというもの。これまで曽慶紅は江沢民系と見られてきたわけで、この報道が事実だとすると今までの見方を再検討しなければならないかも知れない。五中全会を前にしてこうした報道が流れる、或いはリークされるというのは、中々に読めない話だ。その背景などについても考えてみたいが、兵器購入予算案反対に反対デモを見物してこうようと思っているので(参加じゃなくて見物。外国の政治活動には係わらないというのがポリシーなんで)、それは後日。

(註1)「五中全會國慶長假後召開」『香港文匯報』2005/09/25
http://www.wenweipo.com/news.phtml?cat=002CH&news_id=CH0509250013&PHPSESSID=f379a752fda239d895740f47018b57a2&PHPSESSID=49b6984e8fa81bf2057b8993c5bcd55e
(註2)「溫家寶突宣布取消下月的出訪行程,原因不明」『中広新聞網(蕃薯藤新聞)』2005/09/23
http://news.yam.com/bcc/china/200509/20050923159171.html
(註3)林保華「内忧外患困扰中共五中全会」『新世紀』2005/09/24
http://www.ncn.org/asp/zwginfo/da-KAY.asp?ID=65882&ad=9/24/2005
(註4)前掲、『香港文匯報』2005/09/25
(註5)”China's Leader, Ex-Rival at Side, Solidifies Power”, The New York Times,2005/09/25
http://www.nytimes.com/2005/09/25/international/asia/25jintao.html?ei=5094&en=e828ef2c330c3bbc&hp=&ex=1127707200&adxnnl=1&partner=homepage&adxnnlx=1127621115-dJTqAxJOr/uO/W6NUBQFTg
(註6)「胡錦濤曾慶紅 政敵結盟」『中国時報(蕃署藤新聞)』2005/09/25
http://news.yam.com/chinatimes/china/200509/20050925173547.html