中国ヲチの方法論

何となく中国ヲチの方法論などメモ。

派閥主義アプローチ

ここではある指導者とその政治的な支持者間の私的な人間関係を中心としたネットワークを派閥と定義する。

こうした派閥は弾力性を有しており、何かしらの巨大で正式な組織に属しているわけではない。またある派閥のリーダーは、同時に別の派閥のリーダーの支持者であるということもあり得る。

地区ごと、機構ごとに分散した派閥の人的ネットワークは地縁、バックボーンとなる組織、閨閥、自身の支持する路線、イデオロギー等によって形成される。派閥のリーダーと支持者個人は両者のコミニュケーションを通じて協調している。派閥のリーダーと支持者は利益と労務の交換を軸にした忠誠関係で結ばれている。Andrew Nathanはこの関係を「clientlist tie」と呼んだ。

統治エリートの相対的な影響力、彼らの官僚体制、軍部に対するコントロール能力は、彼らの間の私的な人間関係によって決定される。中国の指導層に出現する派閥関係は、この種の人間関係を基礎に形成されるて来た。

こうしたモデルを基にした分析は指導層相互の動き、指導層の意志から全てが出発しているとして、経済的、社会的な要因を軽視しているとの批判もある。

官僚機構アプローチ

中国の統治機構の核心は巨大な官僚機構であるという核心から出発する。

情報の流れ、予算、人事を巡る権力の所在や抗争、機構内部の上下関係、資源の分配を巡る組織間の抗争など、官僚機構モデルを使って組織に注目して分析する。


上述の二つのアプローチは相互に影響しあっていると思われる。ある派閥間の闘争においては、影響力をそれぞれの官僚機構に及ぼし、その支持を獲得するということになろう。その意味である組織の人事の動きなどに注目して一つの官僚組織をある派閥の支持者と見なすのは派閥主義アプローチと官僚機構アプローチの融合的な見かたか。

何となく中国的なこういう人間関係のネットワークを中心にした派閥の形成というのは、科挙制の下での官僚の人間関係のネットワークを思い出させる。その意味で歴史的アプローチというのもあるかも知れない。


これらの枠組みで中共権力のヲチに関するキーワードを抜き出していくと、地縁、閨閥、バックボーン組織、路線、イデオロギー、情報の流れ、予算、人事、資源配分などになる。これらの要素の相互作用と、党の政策や方針のもとで、ある指導者、ある官僚組織の間でそれがどのように受容され、どのように抵抗されるのか、というのをヲチするのが中共権力ヲチの基本的な嗜みとなるだろうか。

これに加えて経済的、社会的な要素が加わってくると更に複雑な様相を呈してくる。最近の中国研究は、ディシプリン的な傾向が強くなって来ていて、こうした伝統的な地域研究のアプローチも複雑化、深化してるので、こうした社会的な要素を変数として加えるのは頭の痛い話しかもしれない。

参考文献:毛里和子『現代中国政治』、Flemming Christiansen『中國政治與社會』(中文訳)