農民の「反乱」現象についてあれこれ

 最近になって報道が増えてきてる中国の集団抗争事件、特に農村のそれは多くの人の耳目をひきつけていると思われる。ネット上に溢れる言論などを眺めるに、或いはかつての王朝の様に、或いはかつて中国共産党が天下をとったように、農民の「反乱」が中国分裂の魁となるという様な議論が多く見られる。歴史的な視点から今日の中国を眺めようというのは必要な視点であるとは思うのだが、どうもその多くが「願望」としか思えなかったり、マスコミの主導するセンセーショナリズムに毒されているようにも思う。中共中央が統治能力を喪失して、やがて中国が支離滅裂な分裂状態に陥る、という考察をするのはよいのだが、そのロジックは提示されてもいいはずだ。あまり説得力のある話はマスコミ媒体に登場するネタでは見受けられないのだが。

 私個人的には今後、中共中央の統治能力が低下するというのはあり得ることだと考えているのだが*1、それが国民国家としての中国の分裂に繋がるか、という点には踏み入る勇気がない。それを議論するのは取りも直さず、清朝崩壊以後の中国がたどった国民国家化の歴史をどう評価するかということであり、現状の中国が国民国家としての要件を備えているのかどうかを評価することになる。はっきり言ってそんもんを評価するのは私には無理だ。

 また、中共中央の統治能力が低下(あるいはそれは党−国家体制の再編という事なのかも知れない)が即、分裂をもたらすと結論づける前に検討しなくてはいけないシナリオは山ほどあるだろう。後共産主義国家という点に鑑みれば、東欧や旧ソ連圏、発展途上国という点に鑑みれば、東アジア、ラテンアメリカ、などの諸国との比較は有意義なもであろうと思われる。*2

 などと最近つらつら考えていたのだが、ちょうど農民の「反乱」現象について書いてある面白そうな資料が手元にあったのでそれを元に何か書いてみようと思い立ったわけだ。興味のある方は何かの考える材料にでもして頂ければさいわいだし、異論がある方はコメントに反論など書いてもらえば幸いである。何よりレスポンスがあると筆者もヤル気がでるのです。ぶっちゃけ最近、ブログにも飽きてきてたしw(筆者睡眠の為、後段は次回) 

*1:詳しく述べると長くなるので省くが、Adam Przeworski,Democracy and the market,Cambridge University Press、の民主化移行の議論など参考になるかと

*2:実際、比較政治学などの分野ではこうした諸国の政治変容を考察するに際しての方法論は洗練されてきている。最も、「民主化」というイシューは多分に政治的なものなのでそれは意識する必要はあるだろうが。旧来、地域研究の領域とされる分野にも政治学社会学、経済学などの訓練を受けた人たちが意欲的に乗り込んできているようで、地域研究はインターディシプリンな学問だ、などとえばっていると、最近の洗練化されつつあるディシプリンごとの方法論を身に付けた専門家にやられますよ、という話である。最も研究の細分化は容易にタコツボ化しやすいので弊害もあるが。まあそういうのを考え悩むのはもっと頭の良い人の特権である。